2025年8月7日に令和7年予備試験短答式の結果が発表され、2,744人の方が本年度の予備試験短答式を突破されました。
本ページでは、予備試験受験生Aさん(仮名)に、令和7年予備試験短答式の傾向の分析をしていただきましたので、ご紹介させていただきます。
受験生Aさん(仮名)による令和7年予備試験短答式の傾向分析
令和7年8月7日に、今年度実施された司法試験予備試験短答式の結果が発表されました。
今年度の短答式試験においては、問題の傾向変化だけではなく、試験そのものの傾向変化も見られる箇所があるため、実際に今年度受験をした受験生の目線で、分析をしていきます。
1. 出願者数と実受験者数の傾向
まず、例年の傾向として、出願者の中から20%前後の方が、当日に欠席ないしは途中退席をしています。
新型コロナウイルスの影響により、感染対策として受験者が大幅に減少した令和2年を除くと、例年受験率は80%前後となっており、今年も同様の結果となりました。
https://www.moj.go.jp/content/001444503.pdf
法務省公開の上記の情報によると、今年は出願者が15,764人に対して、欠席者は3,332人となっており、そのうち途中退席をした人数は101人で、受験率が78.9%となっています。
なお過去5年の受験率としては、令和2年が新型コロナウイルスの影響により69.2%、令和3年が81.8%、令和4年が80.5%、令和6年が79.7%となっており、今年は令和2年のイレギュラーな状況を除くと、直近でも最低の受験率となっています。
受験率が低下している原因として考えられるのが、法曹コースの導入による在学中受験資格と短答式が7月の中旬にずれ込んだことによる、学部やロースクールとの期末試験の兼ね合いがあるでしょう。
法曹コースの既習1年生であれば、その年の予備試験の合否に関係なく、翌年に受験資格を得られる可能性が非常に高いため、そもそも出願自体をしていなかった方もいらっしゃると思いますが、出願をしても期末試験が迫っており、しっかりと単位を確保することの方が、より確実に翌年の受験資格を得られる方法となるため、当日は欠席したというケースが考えられます。
2. 試験そのものの傾向
(1) 合格最低点の変化
今年度の試験においては、各科目の平均点や合格最低点などにおいて、これまでの傾向とは違う結果となっていることが明らかとなりました。
これは昨年度の予備試験から生じた変化を、試験委員がうまく修正することができなかったのではないかと考えられます。
まずは合格最低点についてです。
令和に入ってからの最低点の変化を、今年度を除いて見ていくと、令和元年162点、令和2年156点、令和3年162点、令和4年159点、令和5年168点、令和6年165点となっています。
ご覧の通り、高い年と低い年が交互になっています。しかし、昨年度は傾向的には低い年であるにもかかわらず、165点が最低点となっており、この点数は令和に入ってからは2番目に高い点数となっています。
そして、今年の合格最低点については159点となっており、過去2番目に低い点数となりました。
令和5年の合格最低点が高くなっている要因としては、法律科目が全体として平均点が高かったことに加えて、一般教養の難易度も下がっていたことに起因します。
翌年の令和6年では法律科目の難易度が令和5年と変わらない中で、一般教養もこれまでと比べると、そこまで難しくない年であったため、合格最低点に大きな変動が起こっていませんでした。
昨年度の段階で試験委員側が難易度調整に失敗してしまった可能性があり、その結果として今年度の試験では全体的に難しくなってしまったのではないかと考えられます。
(2) 法律科目の平均点の変化
令和元年以降の各科目の平均点は、以下の通りとなっています。
令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | 令和6年 | 令和7年 | |
憲法 | 14.7点 | 21.5点 | 16.7点 | 19.8点 | 15.2点 | 13.6点 | 13.6点 |
行政法 | 12.1点 | 14.4点 | 10.7点 | 12.8点 | 10.0点 | 11.2点 | 12.9点 |
民法 | 20.3点 | 12.7点 | 17.3点 | 15.2点 | 17.3点 | 16.5点 | 15.3点 |
商法 | 14.2点 | 12.8点 | 16.0点 | 10.9点 | 14.3点 | 14.3点 | 13.7点 |
民訴 | 17.8点 | 15.1点 | 14.6点 | 15.1点 | 16.6点 | 15.6点 | 15.3点 |
刑法 | 14.5点 | 14.5点 | 17.3点 | 17.1点 | 18.2点 | 18.2点 | 14.0点 |
刑訴 | 15.6点 | 13.5点 | 14.6点 | 15.9点 | 14.5点 | 14.6点 | 13.7点 |
こちらも合格最低点と同じく、一部の科目では高い年と低い年を交互に繰り返しており、全体的な難易度調整を行なっています。
行政法については論文式では使用しない短答知識が非常に多く出題される傾向にあり、あまり手が回っていない受験生も多いため、例年もっとも平均が低い科目となっています。
民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法については平均点があまり乱高下することがなく、比較的難易度の落ち着いている科目といえるでしょう。
そんな中でも令和7年予備試験短答式では、難易度の調整がなかった憲法と、昨年度から4.2点も平均点が落ち込んでしまった刑法の異質さが際立つ結果となりました。
特に刑法に関しては、直近でも最も平均点の高い科目の1つであり、ここを得点源としていた受験生も多かったのではないでしょうか。

3. 出題傾向の変化
今年度の予備試験においては、民事訴訟法、刑事訴訟法、商法、行政法のいわゆる下4法については、難易度や出題傾向に特段の変化がなく、例年通りのものでした。
他方で民法、憲法、刑法に関しては、程度の差はあれど、例年とは多少異なる出題傾向と難易度となっていたので、各科目についてお話をしていきます。
●民法
民法については一部、過去問で未出の条文、判例が出題されており、戸惑われた方も多かったのではないかと思います。また既出のものであっても、全体的に細かい知識であったことは否定できません。
それでも平均点が大幅に下落していないのは、全ての問題が組み合わせで解くことができるからというのが挙げられるでしょう。
筆者も正解した問題の片方の選択肢については、はっきりとした知識がないものが何個かあったように記憶しています。
●憲法
憲法はここ数年の問題に限ってお話をすると、明らかに過去問よりも難しい出題が多くなっているように思います。
特に正誤問題については、受験生の手が届いていない範囲で、細かい判旨の言い回しを変更するものがありました。もちろん、過去問にも同様の出題はされてきましたが、それでも正答率が非常に高いものばかりとなっていました。
その理由としては、判例を本質的に理解する上で重要な箇所を変更しているにとどまっていたからです。
しかし、近年ではそのような出題については受験生が対策済みだと、試験委員側が考えているのか、判旨を全て読み込まなければわからないようなものもありました。また、憲法特有の出題として、2つの記述を比較し、片方の記述がもう片方の記述の根拠ないしは批判となっているかどうかを判断させる問題があります。
この問題については、純粋な日本語として文章を読むと、どちらとも取れるものとなっていることがほとんどです。
上記のような形式の問題は、知識を前提に文章を読解することによって、法的思考を用いて解くことが可能なものが過去問には多くありました。しかし、近年の出題では法的思考での判断が非常に難しいものが増えているように思います。
その証拠として、今年度も昨年度も同じ形式の問題において、予備校間の解答速報が異なっていたことが挙げられます。
当然予備校講師といっても、出題者である憲法学者と比較すれば、憲法そのものに対する理解は深くありませんが、受験指導のプロ集団をもってしても解答が割れてしまうというのは、異常事態と言っても差し支えありません。
また、一部の予備校については、法務省の正式な解答の発表により、採点システムの結果が変わったところもあったようです。
●刑法
今年特に受験生からの評価が荒れていたのが刑法でした。
予備試験の刑法は例年13問出題がありますが、そのうち半分近くが文章の穴埋め問題となっていたことが、評価が荒れた原因となっています。
この穴埋め問題というのは、組み合わせを選択する問題や単純な正誤を問う問題と比較すると、回答するまでに時間がかかってしまいます。
それに加えて、今年は問題文中の虫食いの数が非常に多くなっていたため、序盤で余計に時間を取られてしまったという方も多かったのではないでしょうか。
筆者が刑事系の問題に取り組む上でのスタンスは、組み合わせや正誤の問題を先に処理してしまって、最後に穴埋めや見解問題にじっくり取り組むというものであり、今年も例外なくそれを実施したため、時間が足りなくなるという事態には陥りませんでしたが、答案回収の際に刑事訴訟法の問題を最後まで解けていない受験生が周りに何人かいたのがわかりました。
特に刑事系科目は昼食後に行われる最後の法律科目ということもあり、受験生も疲労が溜まっている状態で取り組んだ方も多かったのではないでしょうか。このような状態で例年よりも思考問題が多く出題され、傾向が変わっているとわかると、焦りや疲れなどで普段の演習であれば解けていたはずの問題を落としてしまっているという可能性もあり得ます。
他方で、細かい知識のない受験生にとっては、このような問題は知識で勝負がつくものではないため、ラッキーな問題であるともいえます。
基礎的な知識を背景にして、文脈から適切な用語を選択するものとなっているため、大学受験における現代文のような感覚で解くことができるからです。
来年度も同様の問題が多数出題されるかについてはわかりませんが、テクニックで対応することが十分に可能な問題となっていますので、受験生全体の正答率が高くなる可能性もあるかと思います。
4. まとめ
今年度の予備試験短答式については、イレギュラーな要素が多数盛り込まれていたように思います。
来年度に試験委員が難易度調整を失敗しなければ、再び合格最低点は160点台となることが予想されます。
特に刑法と憲法に関しては、難易度や時間制限の点で改善が見込まれ、その他の科目は例年通りの難易度での出題がなされるでしょう。
— 以上、予備試験受験生Aさん(仮名)による令和7年予備試験短答式の傾向の分析でした。
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※司法試験に関する情報は変更される可能性があります。法務省等のサイトで必ずご自身でご確認ください。参考:https://www.moj.go.jp/barexam.html