令和7年司法試験短答式:予備試験受験生による傾向の分析

司法試験の学修方法

2025年8月7日に令和7年司法試験短答式の結果が発表され、2,902人の方が本年度の司法試験短答式を突破されました。

本ページでは、予備試験受験生Aさん(仮名)に、令和7年司法試験短答式の傾向の分析をしていただきましたので、ご紹介させていただきます。

予備試験受験生Aさん(仮名)による令和7年司法試験短答式の傾向分析

令和7年8月7日に司法試験短答式の結果が発表されました。

筆者は今年度予備試験の短答式を受験しましたが、民法、憲法、刑法については司法試験の短答式と共通の問題もあり、例年難易度についてもほぼ同様となっているため、実際の受験生の意見を踏まえつつ、今年度の司法試験短答式の分析を行なっていきます。

1. 合格最低点の大幅な下落

今年度の司法試験短答式においては、論文式の採点対象となるために必要な最低ラインが、過去最低のものとなっていました。

令和に入って以降の司法試験短答式の合格点は、令和元年108点、令和2年93点、令和3年99点、令和4年96点、令和5年99点、令和6年93点となっており、今年度の試験については81点となっていました。

司法試験の短答式は平成27年から民法、憲法、刑法の3科目となっており、徐々に最低点が低くなっているのが特徴です。
特に令和2年以降は最低点が3桁を切るのが当たり前となっています。

そして今年度はついに90点台を切る結果となりましたが、81点というのはあまりにも最低ラインが低すぎるといえるでしょう。

その要因として考えられるのは、問題の難易度が非常に高かったことが挙げられます。詳しい各科目の分析については後述します。

特に今年受験生の間で話題となっているのが憲法です。
司法試験の短答式においては、各科目に足切りというものが設定されています。予備試験の短答式ではこのような制度がないため、極端な話をすると1科目が0点であっても、最低ラインを突破すれば、論文式の受験資格を得ることが可能となっています。

しかし、司法試験においては各科目の40%未満の点数を取ってしまった場合には、足切りに引っかかってしまい、3科目総合で合格最低点を突破していたとしても、論文の採点をしてもらうことができません。
今年は憲法において、足切りを突破することのできなかった受験生が、非常に多かったことが受験生だけではなく、実務家や予備校講師の間でも大きな話題となっています。

憲法は50点満点で受験生の最高得点が46点、平均点が25.5点と非常に低いものとなっていました。
そして50点の40%は20点であることから、受験生全体で足切りをギリギリ回避したという方が多かったのではないでしょう。

これまでの司法試験短答式においては、足切りラインと受験者平均点がここまで漸近するという現象が起こっていなかったため、今年度では足切りラインを固定することに違和感を覚えるという意見が多く見られました。

今年度のように問題の難易度が上昇してしまうと、受験生の平均点が下がってしまうのは当然です。
しかしながら、足切りラインが固定されてしまうことによって、例年であれば足切りを突破できていたかもしれない受験生が、論文式の採点をしてもらえないという事態が起こってしまったのです。

2. 各科目の分析

冒頭でもお話ししたように、筆者は予備試験受験生であるため、司法試験短答式の問題については、一部本番に解いていないものがあります。
そのため、記事を執筆するにあたって、公開されている問題に目を通した上で、各科目の分析を行なっていきます。

・民法
法については一部、過去問で未出の条文、判例が出題されており、戸惑われた方も多かったのではないかと思います。また既出のものであっても、全体的に細かい知識であったことは否定できません。

それでも平均点が大幅に下落していないのは、全ての問題が組み合わせで解くことができるからというのが挙げられるでしょう。
筆者も実際に解いてみたところ、正解した問題の片方の選択肢については、はっきりとした知識がないものが数問ほどありました。

短答式試験においては、受験生が考えたこともないような事例といった、未知の問題が出題されるということはしばしばあります。
しかしながら、それらは他の選択肢との組み合わせや、基礎的な知識から法的思考を用いることで十分に対応することができる場合が非常に多くなっています。

今年度のように、単純に過去問の周回だけでは身につかないような、細かい知識が多く出題されることとなると、来年受験をする受験生の勉強方法に大きく影響を及ぼし、逆に細かい知識を入れすぎたせいで、基礎が疎かになってしまい、不合格となるという結果まで招きかねないため、あまり良い出題であったとは言えないかもしれません。

・憲法
憲法はここ数年の問題に限ってお話をすると、明らかに過去問よりも難しい出題が多くなっているように思います。

特に正誤問題については、受験生の手が届いていない範囲で、細かい判旨の言い回しを変更するものがありました。もちろん、過去問にも同様の出題はされてきましたが、それでも正答率が非常に高いものばかりとなっていました。

その理由としては、判例を本質的に理解する上で重要な箇所を変更しているにとどまっていたからです。
しかし、近年ではそのような出題については受験生が対策済みだと、試験委員側が考えているのか、判旨を全て読み込まなければわからないようなものもありました。

また、憲法特有の出題として、2つの記述を比較し、片方の記述がもう片方の記述の根拠ないしは批判となっているかどうかを判断させる問題があります。
この問題については、純粋な日本語として文章を読むと、どちらとも取れるものとなっていることがほとんどです。

上記のような形式の問題は、知識を前提に文章を読解することによって、法的思考を用いて解くことが可能なものが過去問には多くありました。しかし、近年の出題では法的思考での判断が非常に難しいものが増えているように思います。
その証拠として、今年度も昨年度も同じ形式の問題において、予備校間の解答速報が異なっていたことが挙げられます。

当然予備校講師といっても、出題者である憲法学者と比較すれば、憲法そのものに対する理解は深くありませんが、受験指導のプロ集団をもってしても解答が割れてしまうというのは、異常事態と言っても差し支えありません。
また、一部の予備校については、法務省の正式な解答の発表により、採点システムの結果が変わったところもあったようです。

・刑法
今年は試験終了後に、刑法の出題傾向が大きく変わっていたことが話題となりました。

司法試験では例年20問の出題があり、その中でも文章の穴埋め問題が9問と半数近くを占めていました。
この穴埋め問題というのは、組み合わせを選択する問題や単純な正誤を問う問題と比較すると、回答するまでに時間がかかってしまいます。
それに加えて、今年は問題文中の虫食いの数が非常に多くなっていたため、序盤で余計に時間を取られてしまったという方も多かったのではないでしょうか。

筆者が刑事系の問題に取り組む上でのスタンスは、組み合わせや正誤の問題を先に処理してしまって、最後に穴埋めや見解問題にじっくり取り組むというものであり、今年も例外なくそれを実施したため、少なくとも予備試験においては時間が足りなくなるという事態には陥りませんでした。

特に刑法の短答は中日の休息を挟んだ5日間の最後の試験ということもあり、受験生も疲労が溜まっている状態で取り組んだ方も多かったのではないでしょうか。このような状態で例年よりも思考問題が多く出題され、傾向が変わっているとわかると、焦りや疲れなどで普段の演習であれば解けていたはずの問題を落としてしまっているという可能性もあり得ます。

他方で、細かい知識のない受験生にとっては、このような問題は知識で勝負がつくものではないため、ラッキーな問題であるともいえます。
基礎的な知識を背景にして、文脈から適切な用語を選択するものとなっているため、大学受験における現代文のような感覚で解くことができるからです。

個人的には、このような問題が多数出題されること自体は、大きな問題ではないように感じています。

特に来年以降受験する方にとって、大きな利害関係があるのは、CBT方式の試験においても、このような穴埋め問題が多く出題されるか否かという点でしょう。

この穴埋め問題については、選択肢が判明したものを問題用紙にメモしつつ、正解の選択肢をあぶり出していくという方法で、回答している方がほとんどかと思います。
しかしながら、CBT方式の短答式においては、今のところメモ用紙が紙媒体で配布することが決定しているのみで、問題用紙の紙媒体での配布は予定されていません。

もちろん、CBTアプリでマウスを使った描画により、問題文にメモをすることは可能となっていますが、うまく扱える人など存在しないと断言してしまっても良いかと思います。
このような状況下で穴埋め問題を解くのは、受験生にとって非常にストレスフルになってしまうことが予想されます。

試験委員が紙媒体で実施される最後の試験だからという理由で、今回は穴埋め問題の比率を増やしており、来年以降は例年通りの出題数であれば、大きな問題にはなり得ませんが、いずれにせよ出題可能性がある以上は、やはり紙媒体で問題用紙を配布しなければならないという事実に変わりはありません。

3. まとめ

今回の短答式では、例年よりも多くの人間が足切りを突破できなかったことが、非常に話題となりました。
その原因のほとんどが憲法の難易度が高かったことと、刑法の穴埋め問題の比率が大きくなったことにあるかと思います。

一部では受験生のレベルが落ちてしまったのではないかという指摘もありますが、受験生の目線で見ると、近年の短答式の問題については、明らかに過去問の難易度を上回っている出題が多くなっているように思います。
しかしながら、憲法の見解問題やあまりにも膨大な範囲の民法については、論文式試験との関係も考えると、受験生がこれ以上対策をしてカバーをするのは非常に難しいといえるでしょう。

そのため、受験生はこれまで通りの短答対策を続けることのほうが、重要なのではないかと思われます。

— 以上、予備試験受験生Aさん(仮名)による令和7年司法試験短答式の傾向の分析でした。

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